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こちらはA☆P☆H/ヘ*タ*リ*アの個人的サイトのtextページです。 女性向(BL)等苦手な方は今すぐお引き取りください。
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ルートヴィッヒとギルベルトは本当に仲がいい。
それは元から十分判っていた。
そのつもりだったのに。
「ふぅ。」
2人の服を眺めながら無意識にため息がでる。
目の前には似たような服が並んでいる。まるで二人で揃えたかのような服ばかり
。
そして私はそのことを羨ましいく感じているのだ。
自分はルートヴィヒッにとって一番身近な存在でありたいと想っているのに、ま
るでそれをあざ笑われているかのような錯覚を覚える。
昨日なんて2人でお揃いのタンクトップを着て一緒に体を鍛えていた。その光景
にまるで自分1人だけが取り残されたような気がして何だか居たたまれなくなっ
てしまったのだ。
一人ポコポコと取り込んだ洗濯物を畳んでいると偶然にも昨日ルートヴィヒが着
ていた黒のタンクトップが最後に手元に残った。
2人は昨日自分にはこなせないようなメニューを談笑しながら軽くこなしていた
。その姿を思い出し、寂しさが募る。
私も彼らと同じようにこの格好で体を鍛えることができたら…ルートヴィッヒは
もっと私のことを意識してくれるでしょうか。
しかし2人のようにハードなメニューをこなすことは現実的に考えると自分には
とても無理なことだ。
せめて格好だけでも真似してみましょう。
私は手に持っているルートヴィッヒのタンクトップを着てみることにする。
早速服を脱いで着るといつもしっかり着込んでいるせいか、胸元や腕がスースー
して何だか心許ない。
そして、いつもルートヴィッヒの鍛えられた体を自然なフォルムで包んでいるそ
れは予想以上に自分には大きい。
さらに残念なことに鏡で見た自分の姿はとても頼りないものだった。
そうですよね、ルートヴィッヒと私ではサイズが違いすぎます。
そこでようやく彼の服を無断で着ているという事実に思い至る。
「…っ!?」
鏡に映る自分の顔が一気に赤くなる。
心情は嬉しい気持ちと無断でこんなことをしているという罪悪感が入り交じった
複雑なものへと変わる。
急いで服を脱ごうと手を伸ばす。それと同時に部屋の扉が開いた。
「ローデリヒ、少しいいか?」
そのまま硬直した私をルートヴィッヒは驚いたように見る、次いでその顔は先ほ
どの私に負けないほど赤く変った。
「ローデリヒ、その…どうして俺のタンクトップを着ているんだ?」
私はその時軽いパニックに陥っていた。
「これは、少し運動しようと思いまして。いつもの服装だと…その、暑いでしょ
う。ですから丁度良いところに涼しそうな服を見つけたので、着てみたのです。
」
我ながら苦しい言い訳だが、他に何も思い付かず頭に浮かんだ言葉をそのまま声
に出す。
「そうか。」
ルートヴィッヒは別段気にする様子もなく言葉をそのまま受け取ったようだ。他
にも何か言いたそうにしている。
もしかして軽蔑されてしまったのでしょうか。
そのことがショックで居たたまれない。ルートヴィヒが何かを話そうと口を開く
。掛けられる言葉が怖くて私は慌てて部屋を出ようと動いた。
「少し運動してきます!」
そのままルートヴィッヒの横を走って通り過ぎようとしたが強い力で腕を捕まれ
る。
「!?」
気付けば彼の腕の中に捕らえられていた。
「駄目だ。ローデリヒ。」
いっそう強く抱きしめられる。
「その格好で外に出ないでくれ。」
その言葉に恐る恐る訪ね返す。
「そんなにおかしいですか?」
どうやらルートヴィッヒも私の言葉が意外だったようで目を丸くしている。
「そうじゃない。その…そんなに無防備な姿のお前を他の誰かに見せたくないん
だ。」
よく見るとまだ顔の赤いルートヴィッヒを見て、軽蔑された訳では無いというこ
とが判り安堵する。
恐らく無意識に発せられたであろうルートヴィッヒの言葉に再び私の顔が赤くな
る。
「…それでは貴方の側にいられないではありませんか。」
「俺の側に?」
思わず口から出た言葉を繰り返され、言葉につまる。
「ローデリヒ、もしかして昨日訓練を見ていたのか?」
「庭でしていたのですから、当然です。」
目の前のルートヴィッヒの顔が優しくなる。
「これ以上俺を本気にさせないでくれ。」
そう言って一つ優しいキスを落とされた。

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「なぁローデリヒ。」
ニヨニヨと笑いながら呼びかけてくるギルベルト。
こういった笑い方をする時はろくな事を考えていない彼に無意識に怪訝な顔で応
える。
「何ですか?ギルベルト。」
そしてやはり今日も予想通り彼はろくな事を考えていなかった。
「これ着てみろよ。」
差し出されたのは昨日洗濯をして綺麗に畳んだギルベルト愛用の黒いタンクトッ
プ。
無意識に声がでた。
「この御馬鹿さんが!!どうして私が貴方のタンクトップを着なければならない
のですか!!」
ぽこぽこと怒りながら、彼の突拍子もない無意味な行動に目眩がする。
するといつもならこのままニヨニヨと笑いながら無理矢理にでも着せようとする
ギルベルトが急に冷静な顔になった。
もともと彼は端正な顔立ちをしているので、不意にこんな顔をされるとドキッと
してしまう。
それを彼に気付かれないように目をそらした。
「なぁ、ローデリヒ。」
再び名前を呼ばれ、渋々顔をギルベルトへと向ける。
そこには普段目にすることのないような笑顔が広がっていた。
そのまま腕を引かれて彼の胸の中に収まる。
「お前よく皿とか割るだろ、どうしてだと思う?」
「知りませんよ。そんなこと。。。お忘れなさい。」
距離が近付いたため耳元で聞こえる声がくすぐったい。
「お前が割れたガラスで怪我でもしたら大変だろう?だから考えたんだ。」
ゆっくりと体を離される。
「俺が思うに、原因はこの窮屈な服だ。」
そうして極自然に私の服の上を指さし、少しだけツンと胸元を突かれる。
「いつも着ている服なのですから、そんなことはありません。」
「よし、わかった。」
彼は先ほど私を突いたのと同じ指で、これから片づけようとしていた食器を指す
。
皿の量はさして多いわけでもない。
「ならお前が今からあの皿を割らずに片づけられたら着なくていい。」
なぜだかひどく楽しそうだ。
「その代わり割ったら…。」
「それを着ればいいのですね。わかりました。」
それを聞いた途端、彼の顔がいつものニヨニヨとした笑顔に変わる。
ああ、やはり彼は何かよからぬことを考えていたのだ。
少しぽこっとしながら食器を片づける。
ギルベルトが邪魔をしてくるかと身構えたが、彼は椅子に座ったまま楽しそうに
こちらを観察しているのみだ。
何てことはない、この少数の皿たちを普通に片づけるだけのことなのだ。
私は順調に皿を片づけ始めた。
「そうだ、ローデリヒ。」
そこに後ろから思い立ったように声をかけられる。
恐らく彼が私の集中力を欠けさせるために声をかけているのだろう。私は返事も
返さずに引き続き食器を片づける。
だがそれで引き下がるような彼ではない。
「朝から言おうと思ってたんだが。」
途中で言葉を切るものだから続きが気になってしまう。いけないと思いながら食
器に意識を戻そうと試みる。
「実はずっと襟から、この間俺が噛みついた跡が見えてるんだ。悪かったな。」
ガシャン。



「このままでは片づけられません。」
タンクトップ姿になった私は後ろからギルベルトに抱きしめられていた。
これでは動きやすいからと勧めていた彼の意向に反しているのだが、彼が手を離
す気配はない。それどころか。
「ちょ…っと、何処を触っているのですか。」
「んー?」
服が薄いので手の感覚がいつもよりもリアルに感じられる。
「跡つけたい。」
無防備になった首筋に軽く口をつけらる。
しかも腹立たしいことに先ほどの『跡が見えている』というのは嘘だったのだ。
きっちりとパンツに納めたはずのタンクトップがいつの間にか外にだされている
。
そして驚いたことに、そこに至ってようやく私はこの状況の危うさに気づいたの
だ。
「ちょっ。ギルベルト!駄目ですよ!!駄目ですったら!!!」
((強制終了
今日花を見つけた。

相変わらず一人で出掛けたまま帰ってこないオーストリアを回収しに行った先で
だ。
また道で伸びているのだろうと予想し、見てもいない状況にポコポコと怒りがら
歩き、ようやくオーストリアを見つけた。
珍しいことにオーストリアは伸びてはいない。そのことに幾分か気分が落ち着き
、次いで辺りに響くような大声で怒鳴りつけた。
「何故早く帰って来ないのである!?」
突然の大声に驚いたオーストリアは前に倒れそうになり、慌てて何かを庇うかの
ように不自然な動作でバランスを崩していく。
そこで倒れる直前に勢いよく腕を引っ張った為、2人でしりもちをつくことにな
った。
ようやくこちらに気付いたオーストリアと目が合う。
「スイス、びっくりしました。」
にっこりと笑顔を向けられたら、先程まで顔を見たら言おうと身の内に溜めてい
た怒りも忘れてしまう。

次に帰って来なかったら倍にして言おうと堅く心に誓いながら、結局自分はオー
ストリアのことが心配で仕方がないのだと認識する。
「ここで何をしていたのであるか?」
そう聞くとオーストリアは急いで立ち上がり、辺りを見回した。
直ぐに目的のものを見つけたらしく、笑顔を向けてくる。
「スイス、見てください。」
そしてそこには見たことも無いような白い花が一輪、凛と咲き誇っていた。

名も知らぬ花だったが、その白さは気高く、まるでオーストリアのようだと思っ
た。



その日からオーストリアは毎日のように、あの花の咲く場所に行くようになった
。
何処かで迷っているのか帰って来るのはやはり遅いものの、行き先が判っている
ため安心して回収できた。
そんなある日、やはり道に迷っているのかオーストリアが帰って来ない。
やれやれと仕方なくあの花の場所へと向かった。

オーストリアはそこに居た。
ただいつもと違っていたのは花を見て嬉しそうだった顔が今は涙で濡れているこ
とだ。
近付いてみると、オーストリアが泣いている理由がすぐに判る。
気高かったあの花が踏みつけられて今は見る影もなく無惨に地面にひれ伏してい
たのだ。
我輩はその場所で、ただただ泣き続けるオーストリアの腕を掴み、無言で歩き出
した。
手を引いたままずんずん先へ進む。
後ろからは未だ泣き声が聞こえ、繋いでいる手をさらにギュッと握る。
しばらく歩いた所でようやく目的地に到着した。
「付いたのである。」
その光景を見て、オーストリアが感嘆の声を上げる。
目の前には先程と同じ白い花が群をなして絨毯のように広がっていたのだ。
ここは先日オーストリアを探しに行った時、偶然見つけた場所だった。

「綺麗…です。」
「そうであるか。」
そのまま2人で花を眺め続けた。辺りもすっかり暗くなったところで、ようやく
言葉を交わす。
「この花が好きなのだな。」
そして笑顔を取り戻したオーストリアは躊躇いもなく応えた。
「この花はスイスに似ていますから、大好きです。」



*×*×*×*×*×*

「なっ!?何故貴様がここに居るのである!!」
今自分が居るのは町の中心でも都市でも無く、賑やかなマーケットでも無い。強
いて言えば何も無い山岳だ。
そしてここは間違いなく自国の領土である。
スイスが声を荒げた先には顔も見たくないオーストリアが居た。
「わかっています。ただ…」
言葉を濁し、それ以上を語ろうとしないオーストリアを睨みつける。
「この辺りかと思いまして。」
それきりオーストリアは視線を外して口を閉じる。
だがその言葉が何を意味しているのか判ってしまった。
「付いて来るのである。」無言のまま2人はあの場所へ向かった。
やがて広がる白白白。
あの時と変わらぬ風景がそこには存在していた。
「綺麗ですね…。」
心なしか嬉しそうな声。
「少しだけなら入国を許可するのである。」

今だけは2人きりだった頃の懐かしい時が流れていた。


エーデルワイス。

その花言葉は『大切な思い出』。


坊ちゃんが子猫になった。
何でこうなったのか、どうして猫なのか聞きたいことは山ほどあるが原因は判りそうにない。
どうして判りそうにないかというと、子猫の坊ちゃんはどうやら言葉を話せないらしいからだ。
この様子だと俺の言葉も判っているのかどうか怪しい。

今朝まで坊ちゃんは確かにいつも通りだった。
俺は朝から透かした御貴族様の顔を見て今日はどうやって困らせてやろうかと考えたものだ。
それがどうだ、この有様は。
朝から面白くもない会議に出て、家に帰ってきた俺は門をくぐったところで犬達が中庭にある、家の屋根程もある木に集まっているのを不思議に思った。近づいて木を見上げてみると。。。
頭上には猫の耳とシッポを持つ小さな坊ちゃんが震えながら木にしがみついていたというわけだ。
しかも犬達を遠ざけて助けてやったからか、懐かれちまった。
未だこの俺がローデリヒに懐かれているということにどうも実感を持てない。
何故ならば俺はローデリヒが嫌いだ。昔から気に入らなかったし、今も気に入らないと思っている。
なのに何でだ。・・・子猫になった坊ちゃんはめちゃくちゃかわいい。
本当に本人なのか信じられずローデリヒと名前を呼んでみると、どうやら自分の名前はわかるらしく。
にゃぁ。
という返事が返ってきた。
つまりこの子猫は間違いなくローデリヒだということだ。

半信半疑で家の中を捜索してみるも、予想通り部屋の中にローデリヒの姿はない。
すると先ほど子猫のローデリヒを置いてきた場所からドカン!ガラガラといういつもの爆発音とは異なった大音量が響いた。
「なんだぁ!?」
急いでリビングに向かうとそこにローデリヒの姿はなく、
その音が隣のキッチンから発せられたことが判った。
覗いてみると少し高めの位置にヴェストが置いていた筈の大量のジャガイモが、今は無惨に床に転がっている。そして座り込んだ状態でペタリと猫耳を下げて頭を抱えているローデリヒが目に入る。まさか・・・
座り込んだローデリヒの頭を撫でてみるとフカフカとした感触の他に僅かではあるがタンコブができあがっているのがわかる。どうやらジャガイモの入った袋に飛びついた拍子に上から降られたらしい。
ジャガイモの中からローデリヒを抱き上げるとギュッと抱きついてくる。
やべぇ・・・かわいい。
撫でてやるとゴロゴロと喉をならす。
普段の坊ちゃんもこの位素直なら可愛げもあるというものだが。。。と考えてハッと我に返る。
何考えてんだ俺。
腕の中のローデリヒも心配そうに俺の顔をのぞき込んでいる。
その近さに思わず目を反らし。
グゥー。
ちょうどその時、俺腹が空腹を訴える。
腹減ったな。
「お前も腹減ってたのか?」
ローデリヒを降ろし冷蔵庫の中を覗く。中にフライパン女が持ってきたグーラッシュを見つける。他にも子猫になる前のローデリヒが作っていたらしいクラウン型をしたパンに今朝買ってきたらしいヴァイスウルスト。付け合わせのジャガイモ。デザートにクリームシュニッテ、これもローデリヒが作ったものだろう。
遅めの昼食には十分だ。料理を温めてテーブルに用意し、足下でちょこちょこしているローデリヒを椅子に座らせる。
「こぼすなよ。」
言ってるそばからローデリヒがグーラッシュの入ったスープ皿をひっくり返しそうになり慌てて止める。
「危ねぇ。」
仕方なくスプーンを取り上げ、冷まして口元に運んでやる。ローデリヒは大人しくスープを飲む。
これがいつものローデリヒならあり得ない状況だ。無意識に普段のローデリヒの口元にスプーンを運ぶ姿を想像しカッと熱が上がる。
どうしちまったんだ俺。


他の全ての料理も食べさせ、お腹がいっぱいになったらしくローデリヒは俺の膝を枕にして小さく丸まったまま、ソファですやすやと眠っている。
こうしている時にも普段のローデリヒと比較してしまい、違和感は感じるものの嫌悪感は全く無く、むしろ愉悦感を得ているのが不思議だ。すやすやと眠るローデリヒの頬を起こさないように撫でる。
RRRRRR
穏やかな時を邪魔するかの如く携帯の着信が鳴る。ローデリヒを起こさないようにそっと携帯を取り出し通話ボタンを押す。
「ギルちゃん☆約束を忘れるなんてお兄さん泣いちゃう。」
「?」
受話器越しに聞こえてきた声はフランシス。
「ギルちゃん約束は守らなあかんで~」
そしてアントーニョの声だ。
気持ち悪い電話にうんざりしつつ、今の電話で今日の約束を忘れていたことに気付く。
「悪い、今日行けねぇわ。」
ローデリヒがこんな状態で、他に頼る者が居ない時に2人と飲みに行くわけにはいかず、悪いと思いながらも断りをいれる。
ピンポーン。
そこに丁度来客を告げるベルが鳴った。
ローデリヒの頭をゆっくり動かしてクッションに移動させる。
そのまま玄関に向かいドアを開けるとそこには。
今まさに電話で話しているフランシスとアントーニョの姿。
「は~い☆お兄さんの登場だよ。」
ウィンク。
「親分もおるで~。」
フソソソソソソ☆☆☆
その鬱陶しい挨拶を確認すると同時に急いでドアを閉める。
しかしそれより素早く2人はドアを押さえ、無理矢理中へと押し入ってきた。
「閉めちゃうなんて酷いじゃない。」
「そうやで、ギルが来られへん言うからシェリーとイベリコ持ってきたんやで。」
どうやら俺が来ないと見越した2人が、こちらに来たらしい。
「そうか悪かったな。」
どうやらここで飲むことになりそうだ。しかしリビングには子猫のローデリヒが居る。こいつらに知れると厄介なことになりそうだと直感が訴える。
勝手知ったる何とやらで、2人は真っ直ぐリビングに向かって歩く。このまま2人をローデリヒに会わせるわけにはいかない。それには先ずここで止めなければならない。
「ちょっと待ってくれ。」
「何や何や~。」
いつも止めたことが無いのでアントーニョは素直に止まる。フランシスは俺の慌てた様子を見てはは~ん。と目を細める。
「兄さんにも見せれない程のものって何かな~。」
「はぁ!?」
そしてフランシスは素早くリビングへと動く。止めようと伸ばした手はヒラリと交わされる。
フランシスが部屋へと到着する前にリビングのドアが開いた。玄関が騒がしくて起きたらしい子猫のローデリヒがこちらを覗く。
「ふああああああぁぁぁ。」
押さえていたアントーニョの声に耳が痛い。
「かわえぇぇぇ。」
その声にびっくりしたらしいローデリヒはビクリと体を震わせて逃げてしまう。
アントーニョは喜々としてローデリヒを追いかけに行ってしまう。こういった時のアントーニョは素早くて誰かに止められた試しがない。
逆にフランシスは制止する。
俺はアントーニョを止めるべくリビングへと直行した。
丁度ローデリヒが行き止まりに追い込まれた所で逃げ場をなくして小さくなって震えている。ペタリと下がった耳が憐憫を誘う。
「怖くないで~。」
慌てて近付き、アントーニョを退かせてローデリヒを抱き上げる。やはり怖かったらしく抱き上げるとローデリヒはギュッと抱きついてきた。
「ギルちゃんずるいわ~。」
そう言って無理にでもローデリヒを撫でる。
そこに置いてきたフランシスが現れた。
「その子もしかして、ローデリヒ?」
「まぁな。」
こいつ等には見せたくなかったが、こうなった以上仕方が無い。歯切れ悪く答える。
「ふ~ん。」
「子猫ちゃん、チョコたべる?」
どこから取り出したのかその手元にはチョコレートが握られている。
「ただのチョコレートだろーな?」
「当たり前でしょ。」
フランシスの手からローデリヒに食べ物を与えられることに不満を覚えながらも、食べてもいいぞと言ってやると、ローデリヒは理解したのかフランシスの手にあるチョコレートをペロペロと舐める。
フランシスの満足そうな顔が無性にかんに障る。
「かわえぇなぁ~。ギルちゃん連れて帰ってもええ?」
そこで俺の中の何かがプツリと音を立てて切れた。
「やっぱ駄目だ!!」
そう言うと俺はローデリヒを抱き締めたまま部屋を飛び出す。
「こいつに触っていいのは俺様だけだ!」
続いて2人も俺の後を追ってくる。
子猫のローデリヒを守るのは大変そうだ。


俺は負ける勝負はしない主義だ。

相手を追いつめ、確実に勝利を勝ち取る。

その俺が笑えるくらい勝ち目のない勝負を自ら提案するなんて。

なぁ。俺に勝ち目はあるのか?

 


家事を終えて本を読んでいると、テーブルの向こうにいる同居人から声をかけられる。
「ローデリヒ、勝負しようぜ。」
チラリと正面のソファに目を向けるとギルベルトが楽しそうにこちらを見ているのが伺える。
彼がこんな顔をするのは必ず何か良からぬ事を考えている時で、また何かイタズラをされるのではないかと警戒心が芽生える。
「お断りします。」
静かに本を閉じて何事も無かったかのようにソファから立ち上がる。
私が立ち上がる事がわかっていたかのように彼も立ち上がっていて、素早い動作でマリアツェルを掴み、強い力で引っ張られる。
「あっ」
不意に訪れた痛みに声が出る。それ以上に強い力で引っ張られているマリアツェルが穫られるのではないかという恐怖に立ち去ろうとした体が動かなくなる。
「マリアツェルを引っ張るのはお止しなさい。」
によによとした顔が私が彼の提案を承諾するまで離す気はないと物語っている。
いつもなら助けてくれるルートも今は不在。
「勝負する気になったか?」
今の彼には何を言っても無駄である事は日頃の行動から重々承知していた。
「仕方ありませんね。」
諦めてそう言うとようやくマリアツェルを解放されて、ホッと息をつく。

「何をするのですか?」
先ほどまで掛けていたソファの上に体を戻され、動けないように肩の上に手を乗せられる。
あまりの近さに少し胸が高鳴る。
「俺は今からお前を口説く。」
「はい?」
あまりに衝撃的な提案に私は彼の言っている意味が解らずジッと彼を見つめる。
「お前が俺に惚れれば俺の勝ちだ。」
ゆっくりと頭の中で彼の言っていることを復唱する。
「では貴方のことを好きにならなければ私の勝ちということですね。」
訳も分からず彼の言っていることの反対を言ってみた。
「そういうことだ。」
「負ければどうなるのですか?」
「俺が負ければお前の言うこと、何でもやってやるよ。」
「私が負ければその逆ということですね。」
ニヤリと笑った彼が何を考えているのか見当も付かない。彼の提案は何て不毛な勝負なのかという内容。それなのに私にとって何て不利なゲームなのでしょう。
それとも彼はこの気持ちを知っていて、業とこんな提案をしているのでしょうか。否そもそも彼は自分にとって不利な提案をしてくるような相手ではないのだ。
そう思うと彼の顔がまるで自分を嘲笑しているかのように見えてくる。
今すぐこんな馬鹿げた遊びは終わりにしたいのに、既に言質は切られてしまった。
こうなれば勝負が付くまで終わることはないのだ。

もう勝負は着いているようなものですね。

私が徹底的に彼のことを嫌うなんて有り得ないことなのに。
そこに至ってようやくこの勝負を提案した彼の意図に気付く。
ギルベルトは私のことを嫌っている。それはもう数世紀以上も前から始まっていることで、周知の事実だ。
つまり私に嫌われることこそが彼の真意ということ。

そんなに私は嫌われてしまっているのですね・・・。

「どうした?」
「いえ、何でもありません。」

そう答えたものの、気持ちはどんどん沈んでいく。
そんな私の両頬を包み、腕の力に誘われて少し顔を上げると彼の瞳と視線が合わさる。
「大丈夫か?」
いつもなら頬を触ると引っ張ってくるギルベルトがこんなに優しくい仕草をするなんて。
もう勝負は始まっているのだということを感じる。
そして彼は私に嫌われることを願っている。
どうするべきか判らなくて黙っているとゆっくりと体を抱き締められる。
「ローデリヒ、愛してる。」
その言葉にビクリと体が震える。

気付かれなかったでしょうか。

どうしましょう。嬉しいだなんて。

無意識に頬を何かが伝う。しばらくして自分が泣いているのだと気付く。
ギルベルトもそれに気づき、涙を拭ってくれる。その指ですら優しくて戸惑いを感じる。
「悪かった。」
そう伝えると彼の指が離れていく。もう片方の手で優しく頭を撫でられて。
「嘘だから泣くな。」
私から離れていく。
「勝負はお前の勝ちだ。」
そう言って彼は振り返ることなくリビングを出ていった。
私は激しい後悔を感じた。
どうして最後まで気持ちを押し殺していることができなかったのでしょう。
そうすれば少しでも長く彼の優しさに触れることができたのに。
そんなことを考える自分が浅ましくて更なる自己嫌悪に陥る。
彼はきっと私の気持ちに気付いて呆れて出て行ってしまったのだ。
「それでも貴方が・・・好きなんです。」

 

 

常からローデリヒが俺の事を避けているのは判っていた。
いつも俺が近付くと警戒していることも。

泣き出すほど脅えられているとはな。

無理矢理傷つけた日の事を思えば無理もないが、自分の愚かさに笑えてくる。
フザケた遊びのように本心を伝えれば、いつものようにポコポコと怒りながらも、もしかしたら受け入れられるのではないかと、何処かで期待していたのだろう。

「一瞬で終わっちまったぜ。」

俺の様子がいつもと違うのがわかるのか、小鳥が心配そうにぴぃと鳴いて俺を見上げる。
思わず外に出てきたものの日差しはまだ弱く風は冷たい。暫く空を眺めていると思いがけない声が聞こえた。
「ここに居たのですね。」
「ああ。」
ローデリヒから話しかけられることは希で、こんな状態でも落ち込んでいた心が浮上するのが判る。
「私の言うこと何でもきいて下さるんでしょう。」
少し屈み俺の顔を覗き込む仕草に、そんなに無防備だと抱き締めたくなるなと考える。
「何でもきいてやるぜ。」
「後悔しても知りませんよ。」
「しねぇよ。早く言えよ。」
ローデリヒは大きく息を吸い込んで呼吸を整えた。
「私とお付き合いしてください。」
一瞬意味を理解できなかった。
「坊ちゃん。」
「何ですか?」
「それはちょっと近くまで付き合って欲しいとかそういう意味じゃねーよな?」
そう確認するとローデリヒの顔が見る見る赤くなり、次いでポコポコと怒りだした。
「当然ですよ。御馬鹿さん。」
「悪い。」
今日何度目かの謝りを入れて顔を覗き込む。
「何度も言わせないでください。」
怒った顔すら愛しくて、俺より細い身体を抱き締める。
「ローデリヒ。好きだ。」
耳元にそう囁くと暫くして腕の中から私もです。と小さな声が聞こえた。

 

これは俺が負けた勝負の中で、最も幸せな奇跡。


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