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こちらはA☆P☆H/ヘ*タ*リ*アの個人的サイトのtextページです。 女性向(BL)等苦手な方は今すぐお引き取りください。
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「なぁローデリヒ。」
ニヨニヨと笑いながら呼びかけてくるギルベルト。
こういった笑い方をする時はろくな事を考えていない彼に無意識に怪訝な顔で応
える。
「何ですか?ギルベルト。」
そしてやはり今日も予想通り彼はろくな事を考えていなかった。
「これ着てみろよ。」
差し出されたのは昨日洗濯をして綺麗に畳んだギルベルト愛用の黒いタンクトッ
プ。
無意識に声がでた。
「この御馬鹿さんが!!どうして私が貴方のタンクトップを着なければならない
のですか!!」
ぽこぽこと怒りながら、彼の突拍子もない無意味な行動に目眩がする。
するといつもならこのままニヨニヨと笑いながら無理矢理にでも着せようとする
ギルベルトが急に冷静な顔になった。
もともと彼は端正な顔立ちをしているので、不意にこんな顔をされるとドキッと
してしまう。
それを彼に気付かれないように目をそらした。
「なぁ、ローデリヒ。」
再び名前を呼ばれ、渋々顔をギルベルトへと向ける。
そこには普段目にすることのないような笑顔が広がっていた。
そのまま腕を引かれて彼の胸の中に収まる。
「お前よく皿とか割るだろ、どうしてだと思う?」
「知りませんよ。そんなこと。。。お忘れなさい。」
距離が近付いたため耳元で聞こえる声がくすぐったい。
「お前が割れたガラスで怪我でもしたら大変だろう?だから考えたんだ。」
ゆっくりと体を離される。
「俺が思うに、原因はこの窮屈な服だ。」
そうして極自然に私の服の上を指さし、少しだけツンと胸元を突かれる。
「いつも着ている服なのですから、そんなことはありません。」
「よし、わかった。」
彼は先ほど私を突いたのと同じ指で、これから片づけようとしていた食器を指す
。
皿の量はさして多いわけでもない。
「ならお前が今からあの皿を割らずに片づけられたら着なくていい。」
なぜだかひどく楽しそうだ。
「その代わり割ったら…。」
「それを着ればいいのですね。わかりました。」
それを聞いた途端、彼の顔がいつものニヨニヨとした笑顔に変わる。
ああ、やはり彼は何かよからぬことを考えていたのだ。
少しぽこっとしながら食器を片づける。
ギルベルトが邪魔をしてくるかと身構えたが、彼は椅子に座ったまま楽しそうに
こちらを観察しているのみだ。
何てことはない、この少数の皿たちを普通に片づけるだけのことなのだ。
私は順調に皿を片づけ始めた。
「そうだ、ローデリヒ。」
そこに後ろから思い立ったように声をかけられる。
恐らく彼が私の集中力を欠けさせるために声をかけているのだろう。私は返事も
返さずに引き続き食器を片づける。
だがそれで引き下がるような彼ではない。
「朝から言おうと思ってたんだが。」
途中で言葉を切るものだから続きが気になってしまう。いけないと思いながら食
器に意識を戻そうと試みる。
「実はずっと襟から、この間俺が噛みついた跡が見えてるんだ。悪かったな。」
ガシャン。



「このままでは片づけられません。」
タンクトップ姿になった私は後ろからギルベルトに抱きしめられていた。
これでは動きやすいからと勧めていた彼の意向に反しているのだが、彼が手を離
す気配はない。それどころか。
「ちょ…っと、何処を触っているのですか。」
「んー?」
服が薄いので手の感覚がいつもよりもリアルに感じられる。
「跡つけたい。」
無防備になった首筋に軽く口をつけらる。
しかも腹立たしいことに先ほどの『跡が見えている』というのは嘘だったのだ。
きっちりとパンツに納めたはずのタンクトップがいつの間にか外にだされている
。
そして驚いたことに、そこに至ってようやく私はこの状況の危うさに気づいたの
だ。
「ちょっ。ギルベルト!駄目ですよ!!駄目ですったら!!!」
((強制終了
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坊ちゃんが子猫になった。
何でこうなったのか、どうして猫なのか聞きたいことは山ほどあるが原因は判りそうにない。
どうして判りそうにないかというと、子猫の坊ちゃんはどうやら言葉を話せないらしいからだ。
この様子だと俺の言葉も判っているのかどうか怪しい。

今朝まで坊ちゃんは確かにいつも通りだった。
俺は朝から透かした御貴族様の顔を見て今日はどうやって困らせてやろうかと考えたものだ。
それがどうだ、この有様は。
朝から面白くもない会議に出て、家に帰ってきた俺は門をくぐったところで犬達が中庭にある、家の屋根程もある木に集まっているのを不思議に思った。近づいて木を見上げてみると。。。
頭上には猫の耳とシッポを持つ小さな坊ちゃんが震えながら木にしがみついていたというわけだ。
しかも犬達を遠ざけて助けてやったからか、懐かれちまった。
未だこの俺がローデリヒに懐かれているということにどうも実感を持てない。
何故ならば俺はローデリヒが嫌いだ。昔から気に入らなかったし、今も気に入らないと思っている。
なのに何でだ。・・・子猫になった坊ちゃんはめちゃくちゃかわいい。
本当に本人なのか信じられずローデリヒと名前を呼んでみると、どうやら自分の名前はわかるらしく。
にゃぁ。
という返事が返ってきた。
つまりこの子猫は間違いなくローデリヒだということだ。

半信半疑で家の中を捜索してみるも、予想通り部屋の中にローデリヒの姿はない。
すると先ほど子猫のローデリヒを置いてきた場所からドカン!ガラガラといういつもの爆発音とは異なった大音量が響いた。
「なんだぁ!?」
急いでリビングに向かうとそこにローデリヒの姿はなく、
その音が隣のキッチンから発せられたことが判った。
覗いてみると少し高めの位置にヴェストが置いていた筈の大量のジャガイモが、今は無惨に床に転がっている。そして座り込んだ状態でペタリと猫耳を下げて頭を抱えているローデリヒが目に入る。まさか・・・
座り込んだローデリヒの頭を撫でてみるとフカフカとした感触の他に僅かではあるがタンコブができあがっているのがわかる。どうやらジャガイモの入った袋に飛びついた拍子に上から降られたらしい。
ジャガイモの中からローデリヒを抱き上げるとギュッと抱きついてくる。
やべぇ・・・かわいい。
撫でてやるとゴロゴロと喉をならす。
普段の坊ちゃんもこの位素直なら可愛げもあるというものだが。。。と考えてハッと我に返る。
何考えてんだ俺。
腕の中のローデリヒも心配そうに俺の顔をのぞき込んでいる。
その近さに思わず目を反らし。
グゥー。
ちょうどその時、俺腹が空腹を訴える。
腹減ったな。
「お前も腹減ってたのか?」
ローデリヒを降ろし冷蔵庫の中を覗く。中にフライパン女が持ってきたグーラッシュを見つける。他にも子猫になる前のローデリヒが作っていたらしいクラウン型をしたパンに今朝買ってきたらしいヴァイスウルスト。付け合わせのジャガイモ。デザートにクリームシュニッテ、これもローデリヒが作ったものだろう。
遅めの昼食には十分だ。料理を温めてテーブルに用意し、足下でちょこちょこしているローデリヒを椅子に座らせる。
「こぼすなよ。」
言ってるそばからローデリヒがグーラッシュの入ったスープ皿をひっくり返しそうになり慌てて止める。
「危ねぇ。」
仕方なくスプーンを取り上げ、冷まして口元に運んでやる。ローデリヒは大人しくスープを飲む。
これがいつものローデリヒならあり得ない状況だ。無意識に普段のローデリヒの口元にスプーンを運ぶ姿を想像しカッと熱が上がる。
どうしちまったんだ俺。


他の全ての料理も食べさせ、お腹がいっぱいになったらしくローデリヒは俺の膝を枕にして小さく丸まったまま、ソファですやすやと眠っている。
こうしている時にも普段のローデリヒと比較してしまい、違和感は感じるものの嫌悪感は全く無く、むしろ愉悦感を得ているのが不思議だ。すやすやと眠るローデリヒの頬を起こさないように撫でる。
RRRRRR
穏やかな時を邪魔するかの如く携帯の着信が鳴る。ローデリヒを起こさないようにそっと携帯を取り出し通話ボタンを押す。
「ギルちゃん☆約束を忘れるなんてお兄さん泣いちゃう。」
「?」
受話器越しに聞こえてきた声はフランシス。
「ギルちゃん約束は守らなあかんで~」
そしてアントーニョの声だ。
気持ち悪い電話にうんざりしつつ、今の電話で今日の約束を忘れていたことに気付く。
「悪い、今日行けねぇわ。」
ローデリヒがこんな状態で、他に頼る者が居ない時に2人と飲みに行くわけにはいかず、悪いと思いながらも断りをいれる。
ピンポーン。
そこに丁度来客を告げるベルが鳴った。
ローデリヒの頭をゆっくり動かしてクッションに移動させる。
そのまま玄関に向かいドアを開けるとそこには。
今まさに電話で話しているフランシスとアントーニョの姿。
「は~い☆お兄さんの登場だよ。」
ウィンク。
「親分もおるで~。」
フソソソソソソ☆☆☆
その鬱陶しい挨拶を確認すると同時に急いでドアを閉める。
しかしそれより素早く2人はドアを押さえ、無理矢理中へと押し入ってきた。
「閉めちゃうなんて酷いじゃない。」
「そうやで、ギルが来られへん言うからシェリーとイベリコ持ってきたんやで。」
どうやら俺が来ないと見越した2人が、こちらに来たらしい。
「そうか悪かったな。」
どうやらここで飲むことになりそうだ。しかしリビングには子猫のローデリヒが居る。こいつらに知れると厄介なことになりそうだと直感が訴える。
勝手知ったる何とやらで、2人は真っ直ぐリビングに向かって歩く。このまま2人をローデリヒに会わせるわけにはいかない。それには先ずここで止めなければならない。
「ちょっと待ってくれ。」
「何や何や~。」
いつも止めたことが無いのでアントーニョは素直に止まる。フランシスは俺の慌てた様子を見てはは~ん。と目を細める。
「兄さんにも見せれない程のものって何かな~。」
「はぁ!?」
そしてフランシスは素早くリビングへと動く。止めようと伸ばした手はヒラリと交わされる。
フランシスが部屋へと到着する前にリビングのドアが開いた。玄関が騒がしくて起きたらしい子猫のローデリヒがこちらを覗く。
「ふああああああぁぁぁ。」
押さえていたアントーニョの声に耳が痛い。
「かわえぇぇぇ。」
その声にびっくりしたらしいローデリヒはビクリと体を震わせて逃げてしまう。
アントーニョは喜々としてローデリヒを追いかけに行ってしまう。こういった時のアントーニョは素早くて誰かに止められた試しがない。
逆にフランシスは制止する。
俺はアントーニョを止めるべくリビングへと直行した。
丁度ローデリヒが行き止まりに追い込まれた所で逃げ場をなくして小さくなって震えている。ペタリと下がった耳が憐憫を誘う。
「怖くないで~。」
慌てて近付き、アントーニョを退かせてローデリヒを抱き上げる。やはり怖かったらしく抱き上げるとローデリヒはギュッと抱きついてきた。
「ギルちゃんずるいわ~。」
そう言って無理にでもローデリヒを撫でる。
そこに置いてきたフランシスが現れた。
「その子もしかして、ローデリヒ?」
「まぁな。」
こいつ等には見せたくなかったが、こうなった以上仕方が無い。歯切れ悪く答える。
「ふ~ん。」
「子猫ちゃん、チョコたべる?」
どこから取り出したのかその手元にはチョコレートが握られている。
「ただのチョコレートだろーな?」
「当たり前でしょ。」
フランシスの手からローデリヒに食べ物を与えられることに不満を覚えながらも、食べてもいいぞと言ってやると、ローデリヒは理解したのかフランシスの手にあるチョコレートをペロペロと舐める。
フランシスの満足そうな顔が無性にかんに障る。
「かわえぇなぁ~。ギルちゃん連れて帰ってもええ?」
そこで俺の中の何かがプツリと音を立てて切れた。
「やっぱ駄目だ!!」
そう言うと俺はローデリヒを抱き締めたまま部屋を飛び出す。
「こいつに触っていいのは俺様だけだ!」
続いて2人も俺の後を追ってくる。
子猫のローデリヒを守るのは大変そうだ。


俺は負ける勝負はしない主義だ。

相手を追いつめ、確実に勝利を勝ち取る。

その俺が笑えるくらい勝ち目のない勝負を自ら提案するなんて。

なぁ。俺に勝ち目はあるのか?

 


家事を終えて本を読んでいると、テーブルの向こうにいる同居人から声をかけられる。
「ローデリヒ、勝負しようぜ。」
チラリと正面のソファに目を向けるとギルベルトが楽しそうにこちらを見ているのが伺える。
彼がこんな顔をするのは必ず何か良からぬ事を考えている時で、また何かイタズラをされるのではないかと警戒心が芽生える。
「お断りします。」
静かに本を閉じて何事も無かったかのようにソファから立ち上がる。
私が立ち上がる事がわかっていたかのように彼も立ち上がっていて、素早い動作でマリアツェルを掴み、強い力で引っ張られる。
「あっ」
不意に訪れた痛みに声が出る。それ以上に強い力で引っ張られているマリアツェルが穫られるのではないかという恐怖に立ち去ろうとした体が動かなくなる。
「マリアツェルを引っ張るのはお止しなさい。」
によによとした顔が私が彼の提案を承諾するまで離す気はないと物語っている。
いつもなら助けてくれるルートも今は不在。
「勝負する気になったか?」
今の彼には何を言っても無駄である事は日頃の行動から重々承知していた。
「仕方ありませんね。」
諦めてそう言うとようやくマリアツェルを解放されて、ホッと息をつく。

「何をするのですか?」
先ほどまで掛けていたソファの上に体を戻され、動けないように肩の上に手を乗せられる。
あまりの近さに少し胸が高鳴る。
「俺は今からお前を口説く。」
「はい?」
あまりに衝撃的な提案に私は彼の言っている意味が解らずジッと彼を見つめる。
「お前が俺に惚れれば俺の勝ちだ。」
ゆっくりと頭の中で彼の言っていることを復唱する。
「では貴方のことを好きにならなければ私の勝ちということですね。」
訳も分からず彼の言っていることの反対を言ってみた。
「そういうことだ。」
「負ければどうなるのですか?」
「俺が負ければお前の言うこと、何でもやってやるよ。」
「私が負ければその逆ということですね。」
ニヤリと笑った彼が何を考えているのか見当も付かない。彼の提案は何て不毛な勝負なのかという内容。それなのに私にとって何て不利なゲームなのでしょう。
それとも彼はこの気持ちを知っていて、業とこんな提案をしているのでしょうか。否そもそも彼は自分にとって不利な提案をしてくるような相手ではないのだ。
そう思うと彼の顔がまるで自分を嘲笑しているかのように見えてくる。
今すぐこんな馬鹿げた遊びは終わりにしたいのに、既に言質は切られてしまった。
こうなれば勝負が付くまで終わることはないのだ。

もう勝負は着いているようなものですね。

私が徹底的に彼のことを嫌うなんて有り得ないことなのに。
そこに至ってようやくこの勝負を提案した彼の意図に気付く。
ギルベルトは私のことを嫌っている。それはもう数世紀以上も前から始まっていることで、周知の事実だ。
つまり私に嫌われることこそが彼の真意ということ。

そんなに私は嫌われてしまっているのですね・・・。

「どうした?」
「いえ、何でもありません。」

そう答えたものの、気持ちはどんどん沈んでいく。
そんな私の両頬を包み、腕の力に誘われて少し顔を上げると彼の瞳と視線が合わさる。
「大丈夫か?」
いつもなら頬を触ると引っ張ってくるギルベルトがこんなに優しくい仕草をするなんて。
もう勝負は始まっているのだということを感じる。
そして彼は私に嫌われることを願っている。
どうするべきか判らなくて黙っているとゆっくりと体を抱き締められる。
「ローデリヒ、愛してる。」
その言葉にビクリと体が震える。

気付かれなかったでしょうか。

どうしましょう。嬉しいだなんて。

無意識に頬を何かが伝う。しばらくして自分が泣いているのだと気付く。
ギルベルトもそれに気づき、涙を拭ってくれる。その指ですら優しくて戸惑いを感じる。
「悪かった。」
そう伝えると彼の指が離れていく。もう片方の手で優しく頭を撫でられて。
「嘘だから泣くな。」
私から離れていく。
「勝負はお前の勝ちだ。」
そう言って彼は振り返ることなくリビングを出ていった。
私は激しい後悔を感じた。
どうして最後まで気持ちを押し殺していることができなかったのでしょう。
そうすれば少しでも長く彼の優しさに触れることができたのに。
そんなことを考える自分が浅ましくて更なる自己嫌悪に陥る。
彼はきっと私の気持ちに気付いて呆れて出て行ってしまったのだ。
「それでも貴方が・・・好きなんです。」

 

 

常からローデリヒが俺の事を避けているのは判っていた。
いつも俺が近付くと警戒していることも。

泣き出すほど脅えられているとはな。

無理矢理傷つけた日の事を思えば無理もないが、自分の愚かさに笑えてくる。
フザケた遊びのように本心を伝えれば、いつものようにポコポコと怒りながらも、もしかしたら受け入れられるのではないかと、何処かで期待していたのだろう。

「一瞬で終わっちまったぜ。」

俺の様子がいつもと違うのがわかるのか、小鳥が心配そうにぴぃと鳴いて俺を見上げる。
思わず外に出てきたものの日差しはまだ弱く風は冷たい。暫く空を眺めていると思いがけない声が聞こえた。
「ここに居たのですね。」
「ああ。」
ローデリヒから話しかけられることは希で、こんな状態でも落ち込んでいた心が浮上するのが判る。
「私の言うこと何でもきいて下さるんでしょう。」
少し屈み俺の顔を覗き込む仕草に、そんなに無防備だと抱き締めたくなるなと考える。
「何でもきいてやるぜ。」
「後悔しても知りませんよ。」
「しねぇよ。早く言えよ。」
ローデリヒは大きく息を吸い込んで呼吸を整えた。
「私とお付き合いしてください。」
一瞬意味を理解できなかった。
「坊ちゃん。」
「何ですか?」
「それはちょっと近くまで付き合って欲しいとかそういう意味じゃねーよな?」
そう確認するとローデリヒの顔が見る見る赤くなり、次いでポコポコと怒りだした。
「当然ですよ。御馬鹿さん。」
「悪い。」
今日何度目かの謝りを入れて顔を覗き込む。
「何度も言わせないでください。」
怒った顔すら愛しくて、俺より細い身体を抱き締める。
「ローデリヒ。好きだ。」
耳元にそう囁くと暫くして腕の中から私もです。と小さな声が聞こえた。

 

これは俺が負けた勝負の中で、最も幸せな奇跡。


もう一緒に過ごせる時間が僅かだとわかっていたのに。つまらないことで喧嘩して、素直になれないままで。

 

『貴方のことが好きなんです』
そう伝えられないまま。


「ちょっと出かけてくる。」
そう言って彼は私の前から居なくなった。

行き先はわかっている。彼が向かったのは極寒の地ロシア。私には追いかけることも許されず、私をこれから監禁するべく寄越されたフランスからの監視がつけられていた。

 

 

ずっと後悔してることがあります。
どうしてあの時素直になれなかったのか。今の私には彼のことを知るすべもなく、唯一の情報源は目の前にいるフランシスのみ。
いつまでこの状態が続くのか見当もつきません。100年先か、200年先、あるいは1000年以上このままかも知れませんし、全てを壊滅間近に追い込まれた私の状態が長引けば消滅する可能性も有ります。
私は紙と万年筆を取り、彼へ手紙を書くことにしました。
もちろん今の状態でこの手紙を彼に渡すことは不可能です。屈辱ですがフランシスにお願いすることにします。
当然自分に利益の無い取引をフランシスが認めるわけがありません。
しかしこの身体は私のもので有りながら、既に私のものではありません。つまり私の手元には取引対象となるものが何も無かったのです。
否一つだけ最後まで残しているものがあります。本当は最後まで取っておきたかったのですが、これもいつまでも残していても消滅してしまえば無いも同じです。ですからフランシスには私の心を差し上げることにしました。

だからどうか彼に渡してください。

 

ギルベルト・バイルシュミット消滅。
何が起こったのか理解できませんでした。私の手紙は彼に届くことなく、返ってきたのは貴方の訃報です。
ようやく内容を受け入れましたが何も感じません。そう、手紙を運んでいただく代償として私は心を既にフランシスに差し上げてしまったからです。それなのに何故、私の視界は歪んでいるのでしょう。

 


とても長い時が経ちました。もしかするととても短かったのかもしれません。そんな私の目の前に懐かしい面影が現れました。
「ただいま、坊ちゃん。」
そう、貴方は消滅などしていなかったのです。


貴方が私の元に再び現れたとき、無くなったはずの私の心は確かに喜びを感じていました。
きっと私の手紙が貴方に届いたのでしょう。

今、貴方の声や優しさを感じることができる私は本当に幸せです。


『貴方に逢いたくて仕方ありません。
                 どうか無事で戻ってきてください。
      
その時には私の心はこの場所に無いかもしれませんが

私の無くした心を埋められるのは
               貴方しか居ないのですから。』


「いや…っ」

ドア越しに聞こえる声は聞きなれている男性なのに透き通った高い声ではなく、今は小鳥のような少女のそれだ。息を切らせたローデリヒの気配が伝わる。

「だめだ。」

続いて聞こえたのはヴェストの声。こちらも珍しく息を切らせている。

「あっ!」

一体中で何が起こっているのか、そこで堪らずドアを開く。

勢いよく開けられたドアに驚き、2人は動きを止めた。目の前にはヴェストに抱きついている少女の姿のローデリヒ。と、布を高く持ち上げているヴェスト。

「なにやってんだ。」

「兄さん。」

助けてくれ。その悲鳴に近い声に俺の闘志が芽生えそうだ。ヴェストをここまで疲弊させるとは嬢ちゃん侮れないぜ。

かわいいヴェストからの頼みは兄として捨てられない。

「とりあえず離れろ。」

先ずは嬢ちゃんをヴェストから離そうと後ろから引っ張るが、細い体でヴェストにしがみつく様子は子猫がお気に入りの毛玉から離れたくなくて必死に爪を立てているところに似ていて微笑ましい。

力で引き離すことは可能だが、やり過ぎると嬢ちゃんの身体が壊れそうで力を入れようにも入れられず。

ったく、俺にしがみ付けよ!!

と怒鳴ってやりたいが、それも大人げないかと押しとどめる。

「大体、何で嬢ちゃんがヴェストにしがみついてんだ。」

おかしいだろ!?俺じゃないなんて!!

「ルートがまだ履ける下着を捨てようとするからです。」

なんだと。

どうやらローデリヒはこの少女の姿で例の如くヴェストの下着を縫う気らしい。その姿を想像してみる。

「ダメだ。」

「ぜってー許さねぇ。」

俺の下着を縫われるのは嫌だが、頭の中の光景に妙な嫉妬心が芽生える。

「大体年頃のヴェストの気持ちも考えろよ。そんな格好のお前に下着なんか縫われたら可愛そうじゃねーか。もうお前は縫わなくていい。ヴェストの下着は俺が買う!」

しかも妙な提案までしちまった。

「勘弁してくれ。」

あきれ顔のヴェストには悪いが男に二言は無いぜ。

「なっ!?そんなこと許しませんよ。」

ポコポコ怒りだす嬢ちゃんも可愛らしい。そこで俺は閃いた。

「嬢ちゃんの下着も買ってやろうか?」

みるみる嬢ちゃんの顔が赤くなる。

「このお馬鹿さんが!!」

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