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こちらはA☆P☆H/ヘ*タ*リ*アの個人的サイトのtextページです。 女性向(BL)等苦手な方は今すぐお引き取りください。
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俺は負ける勝負はしない主義だ。

相手を追いつめ、確実に勝利を勝ち取る。

その俺が笑えるくらい勝ち目のない勝負を自ら提案するなんて。

なぁ。俺に勝ち目はあるのか?

 


家事を終えて本を読んでいると、テーブルの向こうにいる同居人から声をかけられる。
「ローデリヒ、勝負しようぜ。」
チラリと正面のソファに目を向けるとギルベルトが楽しそうにこちらを見ているのが伺える。
彼がこんな顔をするのは必ず何か良からぬ事を考えている時で、また何かイタズラをされるのではないかと警戒心が芽生える。
「お断りします。」
静かに本を閉じて何事も無かったかのようにソファから立ち上がる。
私が立ち上がる事がわかっていたかのように彼も立ち上がっていて、素早い動作でマリアツェルを掴み、強い力で引っ張られる。
「あっ」
不意に訪れた痛みに声が出る。それ以上に強い力で引っ張られているマリアツェルが穫られるのではないかという恐怖に立ち去ろうとした体が動かなくなる。
「マリアツェルを引っ張るのはお止しなさい。」
によによとした顔が私が彼の提案を承諾するまで離す気はないと物語っている。
いつもなら助けてくれるルートも今は不在。
「勝負する気になったか?」
今の彼には何を言っても無駄である事は日頃の行動から重々承知していた。
「仕方ありませんね。」
諦めてそう言うとようやくマリアツェルを解放されて、ホッと息をつく。

「何をするのですか?」
先ほどまで掛けていたソファの上に体を戻され、動けないように肩の上に手を乗せられる。
あまりの近さに少し胸が高鳴る。
「俺は今からお前を口説く。」
「はい?」
あまりに衝撃的な提案に私は彼の言っている意味が解らずジッと彼を見つめる。
「お前が俺に惚れれば俺の勝ちだ。」
ゆっくりと頭の中で彼の言っていることを復唱する。
「では貴方のことを好きにならなければ私の勝ちということですね。」
訳も分からず彼の言っていることの反対を言ってみた。
「そういうことだ。」
「負ければどうなるのですか?」
「俺が負ければお前の言うこと、何でもやってやるよ。」
「私が負ければその逆ということですね。」
ニヤリと笑った彼が何を考えているのか見当も付かない。彼の提案は何て不毛な勝負なのかという内容。それなのに私にとって何て不利なゲームなのでしょう。
それとも彼はこの気持ちを知っていて、業とこんな提案をしているのでしょうか。否そもそも彼は自分にとって不利な提案をしてくるような相手ではないのだ。
そう思うと彼の顔がまるで自分を嘲笑しているかのように見えてくる。
今すぐこんな馬鹿げた遊びは終わりにしたいのに、既に言質は切られてしまった。
こうなれば勝負が付くまで終わることはないのだ。

もう勝負は着いているようなものですね。

私が徹底的に彼のことを嫌うなんて有り得ないことなのに。
そこに至ってようやくこの勝負を提案した彼の意図に気付く。
ギルベルトは私のことを嫌っている。それはもう数世紀以上も前から始まっていることで、周知の事実だ。
つまり私に嫌われることこそが彼の真意ということ。

そんなに私は嫌われてしまっているのですね・・・。

「どうした?」
「いえ、何でもありません。」

そう答えたものの、気持ちはどんどん沈んでいく。
そんな私の両頬を包み、腕の力に誘われて少し顔を上げると彼の瞳と視線が合わさる。
「大丈夫か?」
いつもなら頬を触ると引っ張ってくるギルベルトがこんなに優しくい仕草をするなんて。
もう勝負は始まっているのだということを感じる。
そして彼は私に嫌われることを願っている。
どうするべきか判らなくて黙っているとゆっくりと体を抱き締められる。
「ローデリヒ、愛してる。」
その言葉にビクリと体が震える。

気付かれなかったでしょうか。

どうしましょう。嬉しいだなんて。

無意識に頬を何かが伝う。しばらくして自分が泣いているのだと気付く。
ギルベルトもそれに気づき、涙を拭ってくれる。その指ですら優しくて戸惑いを感じる。
「悪かった。」
そう伝えると彼の指が離れていく。もう片方の手で優しく頭を撫でられて。
「嘘だから泣くな。」
私から離れていく。
「勝負はお前の勝ちだ。」
そう言って彼は振り返ることなくリビングを出ていった。
私は激しい後悔を感じた。
どうして最後まで気持ちを押し殺していることができなかったのでしょう。
そうすれば少しでも長く彼の優しさに触れることができたのに。
そんなことを考える自分が浅ましくて更なる自己嫌悪に陥る。
彼はきっと私の気持ちに気付いて呆れて出て行ってしまったのだ。
「それでも貴方が・・・好きなんです。」

 

 

常からローデリヒが俺の事を避けているのは判っていた。
いつも俺が近付くと警戒していることも。

泣き出すほど脅えられているとはな。

無理矢理傷つけた日の事を思えば無理もないが、自分の愚かさに笑えてくる。
フザケた遊びのように本心を伝えれば、いつものようにポコポコと怒りながらも、もしかしたら受け入れられるのではないかと、何処かで期待していたのだろう。

「一瞬で終わっちまったぜ。」

俺の様子がいつもと違うのがわかるのか、小鳥が心配そうにぴぃと鳴いて俺を見上げる。
思わず外に出てきたものの日差しはまだ弱く風は冷たい。暫く空を眺めていると思いがけない声が聞こえた。
「ここに居たのですね。」
「ああ。」
ローデリヒから話しかけられることは希で、こんな状態でも落ち込んでいた心が浮上するのが判る。
「私の言うこと何でもきいて下さるんでしょう。」
少し屈み俺の顔を覗き込む仕草に、そんなに無防備だと抱き締めたくなるなと考える。
「何でもきいてやるぜ。」
「後悔しても知りませんよ。」
「しねぇよ。早く言えよ。」
ローデリヒは大きく息を吸い込んで呼吸を整えた。
「私とお付き合いしてください。」
一瞬意味を理解できなかった。
「坊ちゃん。」
「何ですか?」
「それはちょっと近くまで付き合って欲しいとかそういう意味じゃねーよな?」
そう確認するとローデリヒの顔が見る見る赤くなり、次いでポコポコと怒りだした。
「当然ですよ。御馬鹿さん。」
「悪い。」
今日何度目かの謝りを入れて顔を覗き込む。
「何度も言わせないでください。」
怒った顔すら愛しくて、俺より細い身体を抱き締める。
「ローデリヒ。好きだ。」
耳元にそう囁くと暫くして腕の中から私もです。と小さな声が聞こえた。

 

これは俺が負けた勝負の中で、最も幸せな奇跡。


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