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女体化注意!
イタリアが林檎をローデリヒに差し出した。
「あのね、オーストリアさん。この林檎食べてください」
嬉しそうなイタリアに差し出された林檎は赤く熟していて、とても美味しそうだった。
「美味しそうな林檎ですね」
一口林檎を口にした。
すると目の前が真っ白になった。遠くでフェリシアーノとルートヴィヒの叫び声が聞こえる。
「フェリシアーノ、この林檎はどこで手に入れた?」
「フランシスお兄ちゃんが、ここに来る途中くれたんだ。」
「フランシスがか?」
「ローデリヒさんと仲良くなりたいから、どうしても林檎を食べてもらいたいって言ってたから。」
そこで完全に意識が途切れた。
目が覚めると、服に違和感を感じた。
心なしかベッドがいつもより広いような気もする。しかし確かに今居るのは紛れもなくいつもの自室だ。
そしてその違和感は胸元にも現われていた。触れてみると微かだが膨らみがあって柔らかい。間違いない。服が縮んだわけでもベッドが大きくなったわけでもない。
身体が女性になっているのだ。
姿見の前で確認する。身長も低くなっていた。
あまりのことに呆然とする。がここでボーっとしていても何の解決にもならない。
先ほどの記憶が確かであればフランシスが渡したという林檎が怪しい。
ならば原因を突き止めるしかない。
かなり背が低くなってしまった為、クローゼットを開き身長に合う服を探し始める。
やはり物は大切にしておくものですね。
少し身長が縮んだところで服に困ることが無いのは、普段からの倹約のお陰だ。クローゼットから小さめの服を探すものの、普段着ることが無い為なかなか見つからない。
出て来たのはハプスブルク時代のドレスだった。このドレスは子供のころに女装の風習があった名残から、女の子だと勘違いされて送られたものだ。流石にそれを着る気はないので他の服を探すが、やはりなかなか見つからない。
そうこうしている内に誰かが階段を上がってくる音が聞こえた。
誰でしょう。この足音はルートのものでは無さそうです。
そうすると頭に浮かぶのはもう一人の同居人。ギルベルト・バイルシュミットだ、彼には特にこの姿を見られる訳にはいかない。
もしかすると自分と気付かれないのではないか、そんな考えが頭をよぎる。しかし常から皆が見慣れている服装で居てはバレてしまうかもしれない。そんなことをグルグル考えていると足音が近づいてきた。もしかするとこの部屋に入ってくるかもしれない。迷っている暇もなく意を決してドレスを着て、複雑なリボンを結ぶ。
扉の前で足音が止まる。すると控え目にノックの音が聞こえた。ギルベルトはローデリヒの部屋に入るのにノックなどしない。では誰が?そこでもう一人の来訪者に思い至った。フェリシアーノだ。普段ならギルベルトの足音を聞き間違えることなど無いのだが、余程気が動転しているらしい。
ノックに応えようとして止める。そもそもこの格好の私が私の部屋に居ることがおかしいのではないか。何と説明をしよう。この場所から出ようにも部屋の外に出れる場所は今フェリシアーノが立っているドアと、自分の後ろにある窓しかない。迷っているとドアが開かれる気配がした。
余程気が動転していたようで、身体は普段では考えられない行動に出た。
慌てて窓を開けて外に飛び出したのだ。窓には大きな木が立っていて、その木の高さは降りるには最適だった。
本当はこんな、はしたない事はしたくなかったのだが外に出れる場所がドアと窓しか無いのだから致し方ない。
ヒラリと木に飛び移り下を目指す。しかし着なれない服が邪魔になり、木から足を滑らせた。
「!!」
どさっ!!
衝撃が体を襲う。と思ったが痛みは一向に訪れない。
そっと目を開ける。
「大丈夫か?」
ルートヴィヒが身体を受け止めていた。
「はい。」
慣れないことはするものではない、と思う。
木から落ちた時に足を捻って結局動けなくなってしまった。こうなってしまったらフランシスを探しに行くどころではない。
私は空からの来訪者としてバイルシュミット家のソファで休ませてもらうことになった。
「か~わいぃね~。ねぇねぇ名前なんていうの?」
隣ではフェリシアーノが嬉しそうに話しかけていた。この子は本当に、どこで育て方を間違えたのかと思う。
そこに一番会いたくない相手が現れた。ギルベルト・バイルシュミット、私が逃げ出したかった理由は彼にこの姿をからかわれたくないからだ。
「坊ちゃん?」
ドキリ。しかしその言葉は私ではなく隣のフェリシアーノに向けられたものだ。
「フェリシアーノちゃん、坊ちゃんが居なくなったらしいな。」
「そうなんだ~。ギルベルトどうしよう。」
その視線は私を真っ直ぐに捕えている。もしかして、気付いているのだろうか。
「私、用事を思い出しましたので失礼します。」
何だか居た堪れなくなり、そう言ってソファを立つと先ほど捻った足にズキリと痛みが走る。よろめいた私は次の瞬間ギルベルトの腕に抱きとめられていた。
「足が痛いんだろ、だったら無理するな。」
そう言ってゆっくりとソファに座らされる。こんなに優しいギルベルトはなかなか見ることができない。自分が今、彼が知るローデリヒ・エーデルシュタインではなく、見知らぬ女性の姿だからこんなに優しい扱いを受けるのだろうか。普段見ることが無い彼の態度に何だか胸のあたりがチクチクしてきた。
「こんにちは。ローデリヒさんいますか?」
そこで突然リビングに新たな来訪者が現れた。
「うぉっ!?ガリ男!?」
「誰がガリ男だよ、つべこべ言わずさっさとローデリヒさん出せよ。」
エリザベータの弟だ。彼はそこでようやくソファに座っている私の存在に気付いた。ジッと見つめられる。ばれるのではないかとドキドキした。
かと思うと私の隣に座って抱きついてきた。
「いつもより腰細いですね。」
耳元で囁かれて、顔が赤くなる。
「なっ!?」
「それに柔らかい。」
「なんだお前、坊ちゃんから趣旨替えか?」
「こっ、こら、お放しなさい。」
「嫌です。」
「ヘーデリヴァーリ駄目だよ~。」
エリザベータの弟ときたら、腕力だけは強い。さらに自分ときたらいつもより貧弱なのだから振りほどける訳がない。
「甘い匂いがします。」
カァッと顔が赤くなるのがわかる。フェリシアーノとヘーデルヴァーリに挟まれながら困っているとギルベルトにヒョイと抱えあげられた。
「こいつは俺が預かる。」
そうして連れてこられたのは彼の部屋。
「他の奴に触らせるなよ。」
その言葉は紛れもなく本当の私に告げられた言葉だった。
「気付いていたんですか?」
「当たり前だろ、俺がお前を間違えるかよ。」
「ヘーデルヴァーリも気付いてたぜ。」
「しかもその格好。」
彼の視線が私の体を上から下までチラリと捕え、すぐに離れる。
「お前絶対外に出るなよ。」
彼は私のみっともない姿を見てそう呟く。
「私だって、好きでこんな姿になった訳ではありません。」
知らず情けない声が出た。
「だからっ…貴方に会いたくなかったんです。」
「馬鹿言うな。俺以外の奴に絶対会うな。」
即座に返された言葉の意味が判らなくて彼の顔を見つめる。
「他の奴に見せたくねーんだよ。」
そう言って顔を背けた。彼は私を馬鹿にしているわけでは無かったのだ。
『当たり前だろ、俺がお前を間違えるかよ。』
先ほどの言葉を思い出す。今までの心細い気持が嘘のように消えて、温かな感情が胸に広がった。
この姿でいるのも悪くないのかもしれません。
【snow white 02へ続きます】