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太陽の沈まぬ帝国。
私は広大な土地を統括するまでに成長した。
その功績とは裏腹に城の庭では憂いの顔を浮かべた若い貴族の娘が佇んでいた。見知った顔の女性だったので、声をかける。
「どうしたのですか?」
彼女はその憂いを話そうか逡巡して、口を開いた。
「私はもうすぐ望まない方と結婚しなければなりません。」
震えながらそう答えた。
「我が家名の為に結婚します。でも…私の心は永遠にあの方のものです。」
そういえば彼女には親しい方がいたな、などとぼんやりと思い出す。そして無意識に口が動いていた。
「本当は結婚など、したくは無いのでしょう?」
「はい…はい。」
そう言って女性は泣き崩れた。
「愛しいあの方と永遠の約束をしたのに、私は約束を守れないのです。」
「では、私が、その方を説得しましょう。」
その提案に美しい女性は眼を瞬かせる。不安そうな様子だ。
「そのようなことが可能なのでしょうか。」
「ええ、ですからもう泣くのはお止しなさい。綺麗な顔が台無しですよ。」
藁をもつかむ心境なのだろう事がその顔から知る事が出来た。彼女は精一杯の思いをこめて「ありがとうございます。」そう呟いた。
私が彼女の婚約者の元へ行けば直ぐに話は付くことは判っていた。彼女の婚約者は以前から私に言い寄っていた人物の一人だったから。
彼女を安心させて別れた後、柱の角を通り過ぎると予想外の人物に声をかけられた。
「どうしてあんな提案をしたんだ。お前には何の特にもならないだろう。」
ギルベルト・バイルシュミット。先ほどの話を彼が聞いていたことに驚いた。
「お前が代わりに抱かれるんだろう?」
そのあからさまな表現にドキリとする。それは極々内輪の者でしか知り得ない事だからだ。彼にだけは知られたくないと思っていたのに。彼は私の事をどこまで知っているのだろう。
「私には、彼女と違って守るものなどありませんから。」
そう発する声が先ほどの女性のように震えていた。
「なら、俺が抱いてやろうか。」
「貴方だけは絶対嫌です。」
いたたまれなくなって、彼の横から逃げるように離れる。
私の気持ちも知らないで。そんなにも簡単に私を抱くと言う彼が憎かった。
「ははっ、いい様だぜ。お貴族様。」
「俺にだけは抱かれたくないんだったな。」
「奪ってやるよ。全部。」
そう言って乱暴に服を引き裂かれた。前儀も何もなく無理やり開かれて、引き裂かれる苦痛に耐える。太ももに血が流れたのがわかった。
こんなにも痛みを感じるのに、ギルベルトが中にいる事に今までにない喜びを感じた。それと同時に内部が収斂する。
「くっ。」
「さすがだな、淫乱お貴族様。」
耳元で囁かれ、激しく律動される。
「その辺の女よりよっぽど良いぜ。」
彼の熱を受け止める。私が気を失うまでその行為は続けられた。
「一人ぼっちになってしまったみたいです。」
「私が小さくて弱かったから。」
「俺が居るだろ。」
「でも私はこの場所に居られないんです。王様がそう言ってました。だからまた一人ぼっちになってしまいます。」
「じゃあお前が一人ぼっちにならないように、俺が迎えに行ってやるよ。」
「本当ですか?」
「ああ。もしお前が一人ぼっちになっても俺がお前を守ってやる。」
約束だ。そう言って右手の甲にキスをした。それは何も知らなかった子供の頃の約束。
あれからどれ程の時が流れただろう。ギルベルト・バイルシュミット。彼が私の目の前に現れた時、私は喜びに充ち溢れた。
城から逃げるかのように旅に出ていたある日、ローデリヒは馬車に乗って遠出をしていた。窓の外を眺めていると見覚えのある顔が目に映り、馬車を止める。予想外の出会いに心が躍る、不意に声をかけたら彼はどんな反応をするだろう。
「ここで何をしているのですか。」
小高い丘の上にある大きな木の下で眼を瞑っている彼に声をかけた。
「思い出してた。」
その言葉に幼い頃の約束をした思い出が蘇った。私にとってその記憶は何よりも大切なものだったから。
「何をですか?」
期待を含んだ声が溢れる。
「昔の思い出だ。」
そう言って彼はまた眼を閉じる。
「約束したんだ。俺が守るって。」
彼は今も約束を覚えてくれている。その事実に胸が熱くなった。
「俺が守ってやらないと駄目なんだ。」
そう語り、再び瞳を開けた彼の目は何処か遠くを見ていて、私の大切な人がこの場所に居ないかのような違和感を感じた。
「なぁ、お前なら判るんじゃないか?あいつの居場所が。」
その言葉にローデリヒの頭の中は一瞬にして真っ白になった。
彼は私の事を覚えてはいない。
彼にとって私は忘却する程の小さな存在だった。ただ、それだけのことなのに理解できない。
「どうなんだ?」
急に黙り込んだ私を不審に思ったギルベルトが顔を覗き込んできた。
このお馬鹿さんが!
「知っていますけどっ。貴方には見つけられません。」
無理矢理平静を装う。声が震えているが、気付かれなかっただろうか。本当は泣きそうだったけれど、ここで泣き出す訳にはいかない。
「どういうことだ?」
その時、心の中で何かが囁いた。
ならば忘れられない記憶を彼に与えれば良い。
「彼ならもうこの世にはいません。」
私の口は無意識に彼にそう告げていた。
「どういうことだ?」
「あの子は死にました。」
そう告げた時の彼の顔は今まで見たことが無いほど衝撃に満ちていた。次の瞬間私は彼に襟元を締め上げられていた。
「嘘だろ!?」
息が詰まる。それでも言葉を繋いだ。
「他国に攻められて呆気なく死にました。」
締め上げている手が離される。
「なあ、お前なら助けられたんじゃないのか?」
「だって、あの子が死んでも私には関係のないことでしょう。」
見る見る彼の顔が怒りに満ちていく。これでいいのだ。何を期待していたのだろう。彼が私を助けに来てくれるとずっとずっと信じていた。しかし、叶わない夢をいつまでも見るのは終わりにしなければならない。
―――「ギルベルト。では私は永遠に貴方を愛することを約束します。」―――
これは子供の頃の貴方への約束。
『戦いは他に任せて、幸せなオーストリアよ汝は結婚せよ』
あの約束の後。故郷を離れて暮らしだした場所は幸いにも土地が良く、傷ついた身体を癒し、穏やかな生活を得ることができた。
しかしその平穏な時は短く、直ぐに他国から目を付けられることとなった。
そんな時、他国に和解を申し入れるようローデリヒに命がくだった。しかしその和解の条件はローデリヒが個人として婚姻関係を結ぶことだった。そうすれば全てが上手く行く。争いが苦手なローデリヒにその決定への拒否権は無かった。
私は婚姻関係を繰り返し、大国を築くことに成功した。しかしそこに残ったのは、穢れた自分への嫌悪と罪悪感。
ギルベルト早く私を助けにきてください。
回り出した歯車は壊れるまで止まることを許されない。
【R-18】
「アントーニョ様はまだお休みになってはります」
だろうな。
何となくそんな予感はしていた。まったくあいつは何時も時間にルーズすぎる。
「そうだと思ってたぜ」
約束していてもこの調子だ。
「しばらく起きてきはりませんし、お風呂でも入りはったらいかがです?」
メイドは俺の恰好を見て気をつかう、来る途中で突然雨に撃たれたのだ。もっともスペイン領に入った途端太陽に照らされて大分乾いてはいたのだが。
「そうだな、借してくれるか?」
「はい、こちらです」
そう言って大浴場に案内された。
スペイン邸の広い浴場。なかなか凝った造りで見た目も美しい。ギルベルトはゆっくりと浴槽で息をついた。するとドアが控えめにと開く音がして、そちらに目を向けた。
入ってきた人物に目を疑い、慌てて大理石の裏に隠れた。
っ!!坊ちゃん!?ウソだろ!?
ローデリヒは白いバスローブに身を包んでいた。キョロキョロと辺りを気にしてから誰も居ないと思ったのだろう、安心したように無防備にバスローブを脱ぐ。
ゆっくりとバスローブが体から滑り落ちる。思わず凝視してしまう。
その白く美しい体には沢山の赤い印が散りばめられていた。
無意識に腹の奥がイライラとしてくる。
ローデリヒが浴槽に入ると今度は元気よくドアが開いた。
「誰も入って来やんように言ってきたでー」
陽気な声が浴室に響く。こちらは素っ裸で元気よく浴槽に入りローデリヒの横に座った。
「当然ですよお馬鹿さんが」
怒りながらもどこか気だるげなところが艶めかしい。そんなローデリヒをアントーニョもまじまじと見ている。
「ほんまに綺麗やなー」
そう言いながらローデリヒの首筋にキスをする。
「…っん!?」
「アントーニョ…もぉ…」
許してほしい。そう言外に視線が訴えている。
「わかった!我慢する」
そう言いながらもアントーニョはローデリヒを膝の上に乗せて体を触った。
すっかりのぼせ上って自室のベッドに運ばれてからどれ程経っただろう。
「ローデリヒ。」
懐かしい声が聞こえたと思ったら口づけられた。最初は優しく、そして次第に深く激しくなっていく。
息苦しさに目を開けるとそこには愛しい人が立っていた。
ああ、夢を見ているのだと思う。
また深く口づけられる。
いつの間にか服が肌蹴られていてギルベルトは体につけられた赤い印を見ると忌々しそうな顔をして同じ場所に印をつけ始めた。
首筋、胸、脇腹、内腿、口づけられただけなのに既に自身は立ち上がっていて膝を抱えあげられている為秘部が丸見えだった。
昨夜一晩中慣らされた後口がものほしそうに彼の目の前で収斂した。
未だ敏感なその部分を見て彼は指を挿入した。
「あぁっ」
貪欲なそこは嬉しそうに彼の指を咥え、音をたてて奥へと誘う。
彼は慎重に指を動かし、柔らかな内部を何度か確認すると指を引き抜き、自身を宛がった。
「あ…っん」
熱くて深いその挿入に目眩がする。広い腕の中に抱きしめられた。
「ローデリヒ。」
その声がまるで本物のようで、ひどく幸せな気持ちになった。
しばらくそのまま動かずにいたが、体に馴染むと彼が動き始めた。もっと奥まで欲しくて、離れたく無くて腰を動かした。彼のものを受け止める。それと同時に頭の中が真っ白になった。
目が覚めるとそこは何時もの寝室で、先ほど見ていたのが幸せな夢だったのだと思い知らされた。彼が私を抱く筈が無いのに。それなのに彼を求めて体の中が疼いた。
突然ですがちょっとしたエロです。何かの文章の間に入っていたような
入っていなかったような。しかも人ん家で!?て感じです。ありがとうございました。
坊ちゃん発見!!
朝のホーム。通勤ラッシュで人が溢れる中、偶然にもギルベルトはローデリヒを見つけた。
さりげなく近づき電車に乗った時には壁際のローデリヒに接近することに成功した。
「!?ギルベルト?」
目の前にいつも自分に対して嫌がらせをしてくる相手がいることに、驚いている様子だ。ケセセ。本音はというと、本当は優しくしたいのに、どうしても上手くいかないのが現状。
「よぉ、坊ちゃん」
そして澄まして答えたものの、内心ではかなりドキドキしていた。近ぇ、近ぇよ!!うわっまつ毛長っっ!綺麗な肌だな、真っ白だし。
その時電車が大きく揺れた。
「!?」
拍子にローデリヒがギルベルトの腕の中に納まった。勿論ギルベルトも同じ方向に倒れそうになったのだが、咄嗟に左手でローデリヒを抱きしめ右手で手すりを掴んだ為、それ以上体が傾くことは無かった。
だ、抱きしめちまった!!
体制を立て直すと、腕の中から愛しい人が起き上がる。温もりが少しづつ離れていくのがこんなにも惜しいなんて。
そんなギルベルトをローデリヒが見つめた。可憐な薔薇のような唇を薄く開き何かを語ろうとしたその時、
先ほど傾いた箱の均等をとるかのように先ほどの揺れとは反対側に電車が傾いた。
―――チュッ
何も考えられなかった。先に正気に戻ったローデリヒが素早く離れた。次の瞬間いつのまに着いたのかドアが開き、ローデリヒは人の流れに押されるようにしてホームへと出て行ってしまう。キス…しちまった
ぼんやりとホームに降り立ったローデリヒの後ろ姿を眺める。自分に残されたのは柔らかな唇の感触だけだった。その余韻に浸る暇もなく、自分と同じく未だ状況が整理できていないらしい坊ちゃんに、フランシスが近づいて挨拶と称したキスをかすめ取るのが目に映った。ちょっと待てこらぁぁぁぁ!!
一瞬フランシスの視線と目が合う、すぐにローデリヒから離れてギルベルトにウインク。あいつ…!確信犯かよ!!
ようやく正気に戻ったギルベルトが慌てて降りようとした時、電車は無情にもギルベルトを確保し次の目的地を目指すのだった。発想が変態。この日一日ギルはそのことばかり考えているはず。